災害遺構紹介第二弾は東日本大震災の災害遺構です。
 岩手県宮古市にあるメモリアルパーク中の浜を紹介します。


元々は静かな海辺のキャンプ場

 岩手県宮古から田老に向けて国道45号線を北上する途中で右折すると、中の浜という所に出ます。ここには震災前、緑豊かなキャンプ場がありました。
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 平成23年3月11日。ここを東日本大震災では約15mの津波が襲い、最大遡上高は21mにも及びました。その被害を受けた状態のまま、キャンプ場の施設が保存されています。
 幸いにも、冬の閑散期に発生したため利用者はいませんでしたが、建物や樹木に大きな被害が出ました。もし、夏の季節に起きていたらどうなったことかと思います。


津波に耐えたトイレ

 中へ進んでいくと左側に一つのかろうじて建っている建物が目に入ります。
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 鉄筋コンクリート造りのおかげか、なんとか津波に持ちこたえたキャンプ場のトイレです。
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 なんとか建物自体は耐えられても、中はボロボロに崩壊しています。
 個室の壁などは全て流れてしまい、便器だけが残っています。
 今後紹介していく震災遺構ではトイレの便器だけ残ったというものが多数あります。地面に作り付けているからか壁は破壊されても便器は残るようです。


屋根が引きちぎられた炊事場

 さらに奥へ目をやると、もう一つ津波によって破壊されたものが目に入りました。
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 所謂キャンプ場の炊事場です。
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 被災前の写真を見てもらうとわかるとおり、ここには屋根がついていましたが、津波によって流れていってしまいました。残された鉄筋が、ものすごい力で屋根が引きちぎられたことを示します。


震災がれきで作られた丘

 さらに後ろには小高い丘があります。
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 丘に登ると海が見えます。
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 海に向かって右手の森の中に何やら看板があります。
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 拡大すると17mの標識。
 津波はあの森の看板の高さまで上がってきたのでした。
 津波の恐ろしいところは、あの高さまで波がかぶったということではないことです。一般的に波は、海面の上下を繰り返す形で押し寄せては引くというイメージですが、津波は大量の海水がひたすら押し寄せてきます。引くことはなく(もちろん大きな周期では押し寄せて引くの繰り返しですけど)、海面が上昇し続けるイメージです。
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 左の四角い三連枠の中に線が引かれているのがわかるかと思います。
 これは、津波がその線まで到達したことを示します。この丘はその高さが丁度目線の位置になるように作られています。わかりますでしょうか、大量の水が押し寄せ、海面がこの高さまで上昇するのです。
 どれだけの莫大な量の水が押し寄せてきているか、実感することになります。
 決して派手な施設というわけではありませんが、静かに津波の恐ろしさを訴えてくる施設です。